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Channel: 最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。
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賢者の贈りもの

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北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
12月4日掲載のタイトルは「賢者の贈りもの」。



 若く貧しい夫婦が相手へのクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。妻は夫が祖父と父から受け継いできた金時計につけるプラチナの鎖を買うために自慢の長い髪の毛を切って売る。一方、夫はその金時計を売り、妻が憧れていたべっ甲製の櫛を買った。アメリカの小説家、オー・ヘンリーが新約聖書の「東方の賢者」を下敷きにして書いた有名な短編小説「賢者の贈りもの」だ。
 11月の雨の夜、狭い居酒屋で飲んでいた。知人が席を外したとき、隣から二人の女性の会話が聞こえてきた。交際中の彼へのクリスマスプレゼントについて、「最初は選ぶのが楽しかったけど、去年から悩むのが辛くなってきた」と話すのを聞いて、この物語を思い出した。
 貧しい家計の中ではどうしても贈り物をするお金を用意できないが、贈り物の価値は相手にふさわしい何かを贈りたいと思う気持ちこそが大切で、愚かな行為に思える2人の行動こそ賢者だということを小説家は教えてくれる。
 お互いの思いやりが余韻を残すストーリーだが、若い頃はあまり賛同することはできなかった。お互いの財布の中身を知っている夫婦がこのような贈り物を用意するべきなのか。思いやりと無理とは違うのではないだろうか。
 私は決して賢者にはなれないが、居酒屋にいた女性はプレゼントに悩むことだけでも賢者の資格は十分にあるはずだ。
                                         (メディカルはこだて発行・編集人)

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